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「全国暴力追放運動推進センター」

2007年4月
「全国センターだより 42号」抜粋
業種別 暴力団排除条項の効果的活用
~地域・業界・主管行政庁等での導入協議が有効~

全国暴力追放運動推進センター
中林 喜代司

 


 暴力団の変身・ボーダレス化、正業を装って取引等々。
 それら不透明化する暴力団の排除に向け、全国各地の暴追センターが個人事業者や企業に導入を呼びかけてきた、「暴力団排除条項」(以下「暴排条項」という。)の効果的活用が注目されている。
  このほど、その活用のタタキ台ともなる暴排条項を業態ごとに例示、解説した冊子「暴力団の介入を防止するために-暴力団排除条項の知識と普及-」(暴力団排除条項推進委員会編著)が発刊され、制作・発売元の出版社に注文が相ついでいる。
  コンプライアンスプログラム、内部統制システムの構築とあいまって、その“タタキ台”による「暴排条項導入の検討・協議」の輪が、地域、業界、そして主管行政庁も交えての「ネットワーク・一斉行動」を促すなどの有効作用となって、新たな暴力団排除条項活動の展開を可能にすることが期待される。
 
「暴力団の介入を防止するために-暴力団排除条項の知識と普及-」 こちらへ>>>


1 暴力団の不透明化

 
 警察庁は、平成18年の暴力団情勢の特徴のひとつとして、暴力団の深刻な不透明化をあげ、
  平成18年末現在の暴力団構成員の数は約4万1,500人、準構成員の数は約4万3,200人で、統計が残る昭和33年末以降、初めて、準構成員が構成員を上回った。構成員が減少する一方、準構成員が増加する傾向は、平成8年末以降続いており、準構成員が構成員を上回る事態は、暴力団をめぐる深刻な不透明化が新たな段階に入ったともいえ、実態解明の推進等の対策が急務となっている。
  暴力団であるか否かという観点のみでなく、暴力団関係企業その他の反社会的勢力を念頭に、幅広く、その行為態様や暴力団との関係等に着目していく必要がこれまでになく高まっている。
と指摘している。
  社会全体の経済活動が多様となるなかで、 巧妙に姿を隠した暴力団勢力が自ら経営に関与する企業等を通じて、 又は企業と結託して各種の事業活動に食い込み、 あるいは企業活動、 政治活動、 社会運動等を巧みに装って資金獲得を図る等の暴力団の不透明化傾向には特に注意を要する状況となっている。


2 暴排条項における拒絶・排除対象のとらえ方

 
 暴排条項は、契約書や規約・約款のなかに暴力団等が取引の相手方となることを拒絶する旨規定するとともに、 契約時暴力団等と知らず取引し、その後相手方が暴力団等であると判明した場合、契約を解除して排除できる旨を規定した条項である。 
  暴力団の属性が不透明化している現状から、拒絶・排除対象をどのようにとらえて暴排条項に盛り込むかが肝要となる。 
  そのとらえ方については、「暴力団等反社会的勢力」として、暴力団、暴力団員、暴力団関係企業・団体、又はその関係者(暴力団の支配下又は影響下にある企業、エセ右翼などの「政治活動標榜ゴロ」、エセ同和行為者などの「社会運動標榜ゴロ」、総会屋など)と広くとらえる属性に加えて、「相手方の違法な行為、不当な行為」といった 行為自体」に着目したとらえ方が必要である。現に行う違法行為、不当行為のほか、過去の刑事・民事・行政問題等に関して違法な行為・不当な行為をした履歴のある者などを含めて排除対象とする。 
  このように属性でとらえた「暴力団等反社会的勢力」、行為でとらえた「違法行為、不当行為」者を暴排条項に盛り込み明示することは、不透明化する暴力団勢力に対して強力な「拒絶・排除ツール」となる。


3 暴排条項の暴力団排除ツール機能

 
 暴排条項を事業所や営業店の出入り口等の目に付きやすい個所に掲示して認識し得るようにし、暴排条項記載の約款等を相手方に事前に交付することで、暴力団等の介入抑止、予防効果が期待できる。 
  簡便な暴排条項として活用できるものに「暴力団排除宣言ステッカー」があり、飲食店等の場合、書面による契約は交わさないところから、このようなステッカーを、店頭に掲示することで、拒絶予告による抑止ともなって排除の効果をあげている。 
  暴力団等と対峙することになる場合は、その場面での拒絶根拠としての機能、また、仮に法廷の場に持ち込まれた場合でも、裁判規範として機能する。 
  また、それら暴排条項の内容が、内外に向かって暴力団等反社会的勢力の排除を表明し宣言することであることから、「コンプライアンス宣言」としての機能を発揮する。 
  そして、何よりも平素、事業活動をしている現場の者にとっては、暴力団等反社会的勢力やその関係者と接するストレスもあるだけに、その排除等の士気を高め、直接対応への不安感を払拭させ、まさに毅然とした態度で臨めるという、万全な備えをつけさせるツールとして非常に有用である。


4 暴排条項導入の促進

 
 各地の暴追センターでは、平成16年1月に全国暴追センターが配布した、暴力団排除条項の法理と活用を著した 「業界別民暴対策の実践」(第一東京弁護士会民事介入暴力対策委員会編)を手引書として、暴排活動を確かなものにするため、その普及に努めてきた。
  昨年10月には、北陸3県の暴追センター(富山・石川・福井)が合同推進事業として、「業界別暴力団排除条項導入の促進」と銘うったパンフレットを作成。
  あらゆる契約の約款などに暴排条項を整備し、暴力団が取引に参入しにくくするとともに、解除できるシステムを作ることが必要と呼びかけ、企業、事業所、営業店等に配布するなど、その促進が図られた。
  共通の取組として3県の暴追センターが「暴排条項導入の促進」を取り上げたことから、新聞報道等もあって反響を呼んだ。


5 暴排条項推進委員会結成による、タタキ台冊子の発刊

 
 そのようななかで、各地の暴追センターからは、全国暴追センターに対し、業種別の「ひな形」があれば普及がしやすいとの要望が多く寄せられた。
  同センターでは、「業界別民暴対策の実践」の編著者である弁護士に同趣旨を伝えたところ、直ちに、有志弁護士12人による暴排条項推進委員会が結成され同会編著による、暴排条項のひな形とその解説を取りまとめた冊子「暴力団の介入を防止するために―暴力団排除条項の知識と普及―」の発刊となった。
  全国暴追センターでは、「暴排条項のひな形をタタキ台として、事業所はもとより、地域や業界の皆で具体的な検討ができるので、明確な暴排意識を共有できる。業種によっては主管行政庁とも協議をすることになるので、より一層その輪が拡充する」として、暴排活動の新たな展開に期待を寄せている。