暴力団情勢
令和5年における主な暴力団情勢とその対策
六代目山口組と神戸山口組の対立抗争の激化を受け、令和2年1月、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」といいます。)に基づき、特に警戒を要する区域(以下「警戒区域」といいます。)等を定めて両団体が「特定抗争指定暴力団等」に指定された後も、両団体の対立抗争は継続していることから、両団体の特定抗争指定の期限を延長するとともに、警戒区域を見直し、情勢に応じた措置を講じています。
こうした中、六代目山口組と、神戸山口組から離脱した池田組との間で対立抗争が発生し、令和4年12月、両団体を「特定抗争指定暴力団等」に指定しました。
今後も引き続き、市民生活の安全確保に向け、必要な警戒や取締りの徹底に加え、暴力団対策法の効果的な活用等により事件の続発防止を図るとともに、各団体の弱体化及び壊滅に向けた取組を推進していくこととしています。
さらに、工藤會については、平成24年12月に「特定危険指定暴力団等」に指定し、以降1年ごとに指定の期限を延長しているところ、令和5年12月には11回目の延長を行いました。
これまで工藤會に対する集中的な取締り等を推進してきた結果、主要幹部を長期にわたり社会隔離するとともに、その拠点である事務所も相次いで閉鎖されるなど、工藤會の組織基盤等に相当の打撃を与えています。
今後も、未解決事件の捜査をはじめとした取締りや資金源対策を強力に進めるとともに、工藤會による違法行為の被害者等が提起する損害賠償請求訴訟等に対する必要な支援や離脱者の社会復帰対策を更に推進していくこととしています。
このほか、暴力団排除の取組を一層進展させるため、暴力団排除に取り組む事業者に対する暴力団情報の適切な提供や保護対策の強化等に取り組んでいます。
暴力団の勢力
暴力団構成員等の状況
暴力団とは、「その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」(「暴力団対策法」第2条第2号)のことをいい、その構成員及び準構成員等(以下、この項において「暴力団構成員等」といいます。)の数※は、令和5年末現在20,400人で、前年と比べ、2,000人減少しました。うち、暴力団構成員の数は10,400人で、前年に比べ1,000人減少し、準構成員等の数は10,000人で、前年に比べ1,000人減少しました。
■暴力団構成員等の推移
※本表における暴力団構成員等の数は概数であり、各項目を合算した値と合計の値は必ずしも一致しません。
注:準構成員等とは、暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与するものをいいます。
匿名・流動型犯罪グループの実態
■匿名・流動型犯罪グループについて
暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の事件を起こしている例がみられるところ、こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、暴力団等の犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付け、取締りの強化等に努めてきました。
こうした中、SNS等を利用して実行犯を募集する手口により特殊詐欺や強盗等を広域的に敢行する集団がみられ、治安対策上の脅威となっています。これらの集団は、暴力団とは異なり、SNSを通じるなどした緩やかな結び付きで離合集散を繰り返すなど、そのつながりが流動的であり、また匿名性の高い通信手段等を活用しながら役割を細分化したり、特殊詐欺等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を基に、更なる違法活動や風俗営業等の事業活動に進出したりするなど、その活動実態を匿名化・秘匿化する状況がみられます。
このような情勢を踏まえ、準暴力団を含むこうした集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と位置付けて、実態解明・取締りを推進しています。
■匿名・流動型犯罪グループの実態
匿名・流動型犯罪グループは、特殊詐欺をはじめ、組織的な強盗や窃盗、違法な風俗店、性風俗店、違法カジノ、違法なスカウト、ぼったくり、悪質リフォーム等に関わり、その収益を有力な資金源としている実態がうかがわれます。
匿名・流動型犯罪グループの代表的な資金源となっている特殊詐欺や組織的強盗・窃盗等を敢行するに当たっては、SNS等を利用し、仕事の内容を明らかにせずに著しく高額な報酬の支払いを示唆するなどして、犯罪の実行犯を募集している実態が確認されています。
また、募集に応募してきた者の個人情報を入手し、場合によってはその個人情報を基に応募者を脅迫するなどして、実行犯として犯行に加担させているだけでなく、実行犯に約束した報酬を支払わない事例が確認されています。
特殊詐欺・強盗等の事件は、広域的に実行される上、首謀者や指示役が国外に所在するケースも珍しくなく、これら上位被疑者に捜査が及ばないよう、遠方から秘匿性の高い通信アプリを使用して実行犯に指示をするなどの特徴がみられます。
企業対象暴力の現状と対策
企業におけるコンプライアンスが重視され、企業活動そのものに廉潔性、透明性が求められている昨今、暴力団等を利用したり、これに資金提供することは厳しい社会的批判を受けることになります。
また、企業として暴力団等への対応を誤ると、経営陣や担当者の責任問題はもとより、株主から賠償請求を受けたり、あるいは企業の信用が失墜し、場合によっては、企業自体の事業継続が困難になるおそれもあります。
暴力団等と関係遮断をすることは、コンプライアンスのみならず企業のリスク管理の観点からも極めて重要です。
今後、企業が暴力団等と知らずに関係を持ち、経済取引等により資金を提供する可能性があることを踏まえれば、暴力団等との関係遮断について規則や体制を整備するとともに、取引活動から暴力団等を排除する仕組みを構築することが求められています。
総会屋
総会屋とは、単元株を保有し、株主総会で質問、議決等を行うなど株主として活動する一方、コンサルタント料、新聞・雑誌等の購読料、賛助金等の名目で株主権の行使に関して企業から利益の供与を受け、又は受けるおそれがある者をいいます。
令和5年においては、11企業の株主総会に延べ11人の総会屋が出席しています。