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民暴弁護士論文

2005年1月 特別寄稿「全国センターだより 33号」抜粋

暴追センター「駆込み寺」論
~相談から解決までの組織的対応の確立に向けて~

 
 

日本弁護士連合会
民事介入暴力対策委員会委員長 弁護士 北川恒久

 


 

1.はじめに

 暴対法施行後、早いもので12年を経過しました。
 その間における民暴対策の充実・強化には目をみはるものがあり、関係各位のご尽力に対しまして、深く感謝申し上げ、また敬意を表させていただきます。
 しかしながら、フロント企業をはじめとする暴力団周辺者による事案(行為主体の変貌)は、後を絶たず、またヤミ金・振り込め詐欺(架空請求・オレオレ詐欺・融資保証金詐欺)など従来の民暴事案の枠を超えたいっそう巧妙かつ知能化した事案(行為態様の変貌)も反復・継続されています。
 さらには行政対象暴力に対する具体的な対応策の確立も急務であります。
 このような状況の下、民暴事案の根絶に向けて、警察・暴追センター・弁護士は相互の連携をさらに強化し、「民暴事案に対する迅速なる対応と救済制度の確立」に向けてなお一層努力しなければなりません。

2.駆込み寺

(1) 一般的に市民の方々が民事の紛争に直面した場合、そもそもどこに相談したらよいのか、どのように解決したらよいのか、多くの場合思い悩むのが現状です。
 ましてや、民暴事案に遭遇した人は、ヘビににらまれたカエル同様の状態に陥り、正常な判断能力が欠如する場合が多々あります。
 「暴力団をおそれない」「毅然たる対応」というのは民暴対策の基本的な鉄則であります。
 しかしながら、一般の市民の方々にこのことを望むのは、時には困難な場合もあります。
(2) 民暴事案に遭遇している被害者が、相談窓口にたどりつくというのは、思い悩んだあげくであるということを、まず認識しなければなりません。
 その場合、単なる相談窓口のみの駆込み寺という機能のみでは不十分と思われます。
 もちろん、相談のみで解決できる事案も全くないとはいえません。
 しかしながら、多くの民暴事案は刑事的処理ないし民事的処理をふまえ、その事案の終局的な解決があってはじめて、被害者の方は民暴事案から開放されるものと思料いたします。
 したがって、相談から解決までのプロセスが用意されている駆込み寺でなければなりません。
 これがまさに、警察・暴追センター・弁護士の連携強化の出発点です。

3.組織的対応の確立に向けて

(1) 私的自治というのは、本来は対等な私人間を想定しています。
 これに対し、民暴事案というのは、一方に暴力団等が加担しているわけでありますから、当然のごとく、その対等性は歪められております。従いまして、これら不法勢力を関係機関連携の下、積極的に排除しなければなりません。
 このことにより、本来の対等な私人間の関係に戻るのであります。
 不法勢力を排除し、終局的な解決に向けた組織的対応の確立が今まさに求められているのであります。
(2) まず、暴追センターが「駆込み寺」となり、警察及び弁護士がその両翼となる体制が確立されなければなりません。
 暴追センターが事案を刑事的処理と民事的処理に振り分け、すばやく関係機関と連携することが、解決に向けての出発点であります。
(3) 刑事的処理を担当する警察が迅速に対応するのは当然のことでありますが、民事的処理を担当する弁護士側も、迅速に、かつ組織的に対応できる体制が確立されていなければなりません。
(4) 平成10年10月21日、千葉県において全国で初めていわゆる「三者協定」が締結され、現時点では34の地域に波及しております。
 また、協定未締結の地域でも民暴研究会等の協議会が実施され、各地域の実情に応じた取組みが展開されています。
 さらには、行政機関も交えたいわゆる「四者協定」も、千葉県、宮崎県等において締結されております。
(5) 本年度(平成16年)、日弁連民暴委員会は、5つの部会が編成されておりますが、その一つが「暴追・被害者支援部会」であります。
 暴追センター・犯罪被害者の支援組織等との連携を強化し、相談から解決までの組織的対応の確立をめざすことを目的としております。

4.日本司法支援センターとの関係

(1) 平成16年5月26日、通常国会において、「総合法律支援法」が成立し、同年6月2日に交付されました。
 これにより、平成18年度中にも「日本司法支援センター」が独立行政法人として設立され、公的刑事弁護運営、民事法律扶助、弁護士過疎対策、そして犯罪被害者支援などの様々なサービスが全国的に展開されることになります。
(2) 現在、日弁連としても、この「日本司法支援センター」の設立に協力すべく体制を整えているところです。
 この支援センターの業務の一つとして、「司法情報提供業務=情報を収集・整理・提供する業務」があります。
 これは、どこにどのような紛争解決機関や相談機関があるのか、いわば国民に対し紛争解決への道案内をする業務です。
(3) この支援センターとの関係においても暴追センターの存在価値・役割は益々重要性を帯びてまいります。
 暴力相談事業だけでなく、少年等保護援助事業、被害者保護救済事業等々を取扱う暴追センターは、全国各地に設立される支援センターの重要なアクセスラインび一翼を担うことになると思います。 「暴力団等不正勢力に関する相談及び解決までの組織的対応については、全てお任せ下さい」と胸を張っていえるよう、警察・暴追センター・弁護士の連携をより強くし、「日本司法支援センター」の率に備えましょう。
 

5.おわりに

 民暴事案に立ち向かうとき、我々の根底にあるものは、「このようなことが許されてたまるものか」という気概であります。
 もちろん、その前提として、民暴事案に遭遇した人々の「このような理不尽な行為には絶対に屈しない」という強い決意がなければなりません。
 しかも、この決意というのは、関係機関との連携の下、組織的対応が確立されていることによって、より強くなるものと考えます。
 組織的な威嚇力を背景に「個人の尊重」「基本的人権」を踏みにじる卑劣極まりない行為-まさしく民主主義の根幹をゆるがす行為を我々はスクラムを組んで排除していかなければなりません。